研究内容

社会基盤設備において, 計画・設計・施工・管理のすべての段階で, 土木構造物が力学的に安全かどうか検討することは重要である. そのために,当研究室では, 現場計測や室内実験から得られるデータを論理的に説明するための「力学現象の モデル化」を行い, それをもとに計算機による予測計算手法を(楽しく)開発する. この研究を遂行するためには,数学および力学の基礎知識が不可欠となるが, 当研究室では,若い世代に対するそろらの教育にも重点を置いている.


粒子法(ラグランジュ法)による流体解析

粒子法は,大変形問題や複雑乱流場に対しても安定かつ高精度な解析が可能であり, 流れ場の数値シミュレーションに対して有効な解析手法の一つとして挙げられる. しかし,比較的新しい手法である粒子法は,運動量やエネルギーの保存性,非物理的な圧力擾乱や数値不安定などいくつかの検討課題を残している. 近年では,これらの問題点についても効果的な改良を行ってきている. 現在,主に取り組む研究テーマは以下:

  1. より高精度な計算スキーム・アルゴリズムを導入した粒子法による高精度安定解析手法の開発
  2. 物理過程を忠実に再現する,粒子法による気液混相流モデルの高精度化

粒子法による流体・構造物連成解析

'

流体・構造物連成問題(FSI)は,応用科学のみならず,様々な工学分野において極めて重要な課題である. 信頼性の高い流体・構造物連成解析には,数値流体力学(CFD)および計算構造力学(CSD)に対応する精度よい物理モデルと, それらの連成手法に関する慎重な検討が必須である. 本研究は,高精度な流体モデルおよび構造モデルに加え,数学的に,かつ, 物理的に整合性のある連成手法を用いた信頼性の高い流体・構造物連成解析手法の開発を目指す.


フレッシュコンクリートの流動解析

コンクリート構造物の施工時における安全性や作業の省力化を検討することを 最終的な目的とし, フレッシュコンクリートの流動解析を行うツールの開発を行っている. フレッシュコンクリートはビンガム流体としてモデル化できることが知られており, 現在,本研究室ではそのビンガム流体の挙動を表現する数値解析手法の開発を中心に行っている. 将来は,ビンガム流体と個体を連成させた流体ー構造連成解析まで発展させる予定である. 弾性波動問題における数値解析手法の開発レーザ超音波法はパルスレーザによって弾性波を励起させ, レーザ干渉計により波を受信することで,被検査体の瑕疵を非破壊で検査する手法である. パルスレーザによって励起される弾性波は高周波成分を含んでおり, 一般の数値解析手法では数値分散や数値拡散のため,精度よく計算することができない. 本研究では,レーザ超音波法の数値シミュレーションを行うことを目的とし, 高精度かつ高速な数値解析手法の開発を行っている.

トンネル工学における合理的設計法に関する研究

わが国のトンネル工学は世界の最先端を走っている. それはあらゆる地盤条件での施工実績に支えられている. いわゆる「山岳トンネル」はそれを囲む地盤と支保で支えられている. その基本は,わが国ではNATMとよばれるモデルで表現されているが, その力学的な説明は完成されていない. 本研究では,支保に作用する土圧の発生メカニズムに着目し, 地盤の安定がどのように生まれるかを説明する. また,支保構造の座屈に関する安全性を照査する手法, トンネル崩壊事例に基づく作用土圧の逆解析手法など, 地盤とトンネル構造物の相互作用問題の理論的な解明に向けての研究を進めている. 特に近年は,青函トンネルに代表される海底トンネルの浸透現象との相互作用による長期安定性を主たる対象としている. 剛塑性有限要素法を用いた地盤構造物の極限状態に関する研究固体材料に対する通常の有限要素法では, 弾性あるいは弾塑性の応力-ひずみ関係が用いられる. この場合,荷重が大きくなって構造物の崩壊状態に近くなると, 数値計算上,不安定な現象が生じる. 一方,剛塑性有限要素法は,この崩壊状態にのみ焦点を当てた数値解析手法で, 崩壊時の応力-ひずみ速度関係を用いる. 崩壊するまでの変形量については,計算できないが,極めて少ない数の材料定数のみで, 崩壊時のメカニズム(崩壊モード)と極限荷重係数が求められるという特徴を有する. これまで,数値解析手法の定式化,プログラムへの実装を中心に行ってきた. 今後は代表的な安定解析の問題である斜面崩壊とグラウンドアンカーの効果について, 実測データや簡易計算法の結果等と比較しながら,実用面での応用を図る.

骨組み構造物に対するヒンジの最適な挿入位置の探索

骨組み構造物は, その剛性や耐荷力を可能な限り大きくするため,連続構造として製作されることが多い.しかし,老朽化した部材や損傷を受けた部材を交換するためには,むし ろヒンジを用いて,取り外しを容易にするような設計法も考えられる.本研究では,多径間-多層ラーメンを対象とし,その各層の柱部にヒンジを1つずつ挿入 する場合に,力学的にもっとも適切な位置を探索する.この場合,剛性をなるだけ減少させないようにする「コンプライアンス最小」問題と,耐荷力をなるだけ 減少させないようにする「耐荷力」最大問題の2つに分けて考察する.ここで「コンプライアンス」とは,与えられた荷重に対する弾性的なエネルギー吸収量を 指す.簡単な場合には,ヒンジの最適高さの理論解を求めることができるので,それを基準にどのようにヒンジの最適位置が定まるのかを力学的に考察する.ま た,骨組み構造にヒンジを多く挿入する場合,不安定構造に陥る恐れがあるため,つねに「不静定次数」と「不安的次数」を計算しておく必要がある.これらの 構造特性を表す指数の求め方については,上記の「不安定構造」の研究と共通する部分がある.

ページのトップへ戻る